2024年独身の日セール結果から考える中国戦略
<目次>
2024年 独身の日(W11セール)の結果
2024年の独身の日(W11セール)の取引額は1兆4,418億元(2024年11月の為替レートで換算すると30兆円を超える数値)で、前年比26.6%増加した。取引額の増加に反して消費意欲は熱狂的とは決して言えない。
取引額が増加した主な要因はプロモーション期間が1ヵ月近くに延長されたこと、家電製品と3Cカテゴリーが中国政府からの補助金によって刺激され、各電子商取引プラットフォームの売上高は増加をしていることがあげられる。
一方でDouyin | 抖音(中国版TicTok)を中心にライブ販売での電子商取引は高成長となった。
各ECプラットフォームの状況
各プラットフォームは正式に独身の日セールデータを公開しない事としていますが、リサーチ機関の分析をまとめると一定の状況が把握できます。
下記は2024年独身の日(W11)セールでの主要プラットフォームの流通総額のシェアの予測値です。
天猫は取引額が前年比15%の成長、淘宝(タオバオ)は前年比8%の成長を達成したと考えます。特に淘宝(タオバオ)での美容部門の成長は15%以上だと推測されます。全体的に取引シェアを低下させる中で新たな体制で実施した販促施策が成果を出しました。
京東(JD.com)は取引額を前年比12%増加したと推測されます。もともと家電や3Cカテゴリー商品に強みがあるプラットフォームであるため中国政府が実施した家電買替補助金の恩恵をもっとも受けました。
拼多多(Pinduoduo)は取引額を前年比20%以上の成長をしたと予想されます。中国経済の減速によって消費者のニーズがより低価格帯の商品に集中したこともあって急激に成長しました。今後もこの傾向は継続すると考えられます
特に注目するプラットフォームは 抖音(Douyin)です。2023年9月には国民的なアプリケーションとして月間DAUは7.4億人を超える規模となっていました。W11のプロモーション期間中に取引額は前年比91%増加しています。また各プラットフォームでのライブ販売は好調でした。
下記グラフは独身の日セールにおける販売手法の構成比の変化です。LIVE販売が2024年には22%まで上昇している事が確認できます。
海外勢大手化粧品ブランドの状況
近年、海外化粧品ブランドは中国国内のブランドに押され続けています。このような状況下で大手海外化粧品ブランドは天猫・淘宝、抖音(Douyin)を中心に積極的な投資を行い2024年の独身の日セールでは良好な結果となりました。
天猫では独身の日キャンペーンの前半は、売上高上位20ブランドのうち、海外ブランドが10ブランドを占め、キャンペーン終盤は海外ブランドのランクイン数は16に達し、2022年の同時期と同じ水準に戻りました。
【中国国内ブランド】
PROYA(珀莱雅)・WINONA(薇諾娜)・Comfy(可复美)・CHANDO(自然堂)
抖音(Douyin) への海外大手化粧品ブランドの投資は拡大しています。長期的なブランディングをプラットフォーム内で実施し販売価格の値下げを行うなど現在の中国市場に合わせる形で継続的な投資が行われています。その結果、2023年10月と比較して2024年はDouyinビューティーランキングのトップ20に入る海外ブランドは7社から13社へ数を増やしています。一方で抖音(Douyin)特有の販促率の高さからROIの低下が課題となっています。
日本を含む海外大手ブランドは中国ECプラットフォームへの投資によって一時的に良好な結果だが、中国経済低迷による影響で全体としては業績はよくありません。マスの中国人消費者のニーズもよりコストパフォーマンスが高いものにシフトする中、ROIの低下は避けられない状況です。
日本メーカーの今後の中国戦略
中国最大のネット通販セールイベントである「独身の日」は流通総額が30兆円を超える規模です。日本の楽天市場の年間の総流通額が約5.8兆円ですからその規模感の大きさは日本メーカーにとって魅力的に感じると思います。
実際にオペレーションに参加しているFindJapanとして今回の独身の日セールの結果への評価と今後の日本メーカー(特に化粧品を中心とする消費財メーカー)がどのように中国市場へ取組むべきかをまとめました。
まず2024年の独身の日のセール結果ですが、非常に厳しかったと認識しています。昨年と同じ条件(期間)でイベントを実施した場合、大きく前年割れをしていたと思います。また、中国市場の低迷によりブランド間での競争はより激化しています。そんな中、大手ブランドは各ECプラットフォームへの投資を増加させ売上確保を行いましたが日本のほとんどの中小メーカーにとってこのような投資は難しいですし、リスクが大きすぎると思います。そもそも天猫などに旗艦店(フラグシップショップ)を立てて運用するのも中小企業にとっては大きな負担ですし実際開設するのも困難です。
一方で日本の中小メーカー様の戦略でうまくいったこともありました。それはまさに「セール脱却戦略」です。ターゲットユーザーを海外商品、とりわけ日本商品に関心が高いユーザー(≒海淘ユーザー)にセグメントし彼らが主に購入する販売チャネルに資源を分散し結果的にROIを高める手法です。独身の日などのセールでの予定販売数を減らし、淘宝(タオバオ)などの人気店舗への配荷を強化しました。また、プロモーションは主に小紅書(RED)を利用して訪日関連コンテンツを使って効率が良いエンゲージメントを実施しました。
下記に中国人が日本商品を購入する「5つの手段」をまとめました.是非皆さんの戦略にお役立てください。