
中国越境EC市場動向【2025年版】
<目次>
「電子商取引に関する市場調査」における越境EC定義
経済産業省が令和6年度「電子商取引に関する市場調査」を取りまとめ報告書を公開しました。このレポートは毎年発表されるものですが、今回は第7章「世界の EC 市場の動向と日本・米国・中国 3 ヵ国間の越境 EC 市場規模」の中から日本⇒中国市場にフォーカスしてまとめました。
数値を分析するにあたって本報告書が指し示す「越境EC」の定義に関して言及します。本報告書は下記の「図表7-2:越境ECの事業モデル」を越境ECと定義していいます。中国事業に従事している皆様からすると違和感がある定義だと思いますので注意が必要です。
中国事業に従事する者からすると一般的には⑴⑵⑶を直送モデルとし⑷を保税区モデルとして区別しこれらを越境ECとして定義します。また、⑸⑹は一般貿易の延長上にあるEC販売として分類します。本報告書はこれら全て広義で越境ECとして定義しています。
FindJapanでは中国人が日本の商品を購入する方法は5つに分類しているので下記に例示させていただきますので参考にしてください。
日本メーカーからすると、「一般貿易」はライセンスの取得など進出ハードルが極度に高く保税区モデルまでの対応にとどまっている事が多いです。
■中国人消費者の5つの日本商品購入方法
越境ECの市場規模
令和6年度「電子商取引に関する市場調査」によると2024 年の世界の越境EC市場規模 は1.01兆 US ドルと推計され、その値は2034年には6.72兆 US ドルにまで拡大すると予測されている。2025 年から 2034 年の年平均成長率は約23.1%と推計されており、世界の越境ECの市場規模は拡大し続けていくと見られている。市場規模の大幅な拡大が予測される背景は、消費者目線で捉えれば、越境ECの認知度の上昇、自国にはない商品・限定品への取得欲求や、自国よりも安価に入手できる商品の存在、 商品やメーカーに対する信頼性、多様な決済手段等が挙げられる。事業者目線で捉えれば、 越境ECによって消費者ターゲットを世界に拡大しようとする事業者の積極姿勢が挙げられる。
また2024年、日本・アメリカ・中国3国間の越境 EC 市場規模の推計結果は、次に示す図表7-7の通りとなった。日本から中国への市場規模は2兆6,372億円となり前年対比8.5%の成長となりました。2024年は中国不動産問題などの影響による中国国内の不景気が懸念されましたが結果として越境ECマーケットは順調に成長している事が確認できます。
中国の越境EC市場に関して
2024年、中国の全世界BtoC-EC 市場シェアは50.4%で大きな市場であるため世界各国のメーカーは様々な問題を抱えながらも中国市場に投資を継続しています。
下記図表 7-13 は、中国における越境 EC 市場規模推計値と前年比の変化率に関するグラフです(2024 年以降の数値は予想値)。2024 年の越境 EC 市場規模は 1,773 億 US ドルと 見られ、前年比で 7.4%増加すると推計されている。越境 EC 市場は拡大傾向にあり、今後 の予想として、2026 年の同市場の市場規模は 2,028 億 US ドルになるとされており、前年比約 6.6%の増加が見込まれています。
2020年の18.8%という高成長率は中国国内での海外商品購入需要の拡大と、2019年までは海外メーカー(事業者)にとって中国への越境EC展開はルールが複雑で参入障壁が高かったですが、現在は越境ECは法整備が進みルールが簡略化されたことで事業者はより簡単にサービスを提供することが可能になったことが要因です。中国の景気によって求められる商品は変化すると思いますが緩やかに成長していくと考えます。
また、中国越境ECの成長は整備されたルールのもと発展した中国国内のプラットフォームの影響が大きく関係しています。
図表 7-12 は、2019 年から2026 年における中国の 4 大 EC 事業者のシェアを示しています。2024 年のシェアトップはアリババグループ(Alibaba)の 39.8%、続いて京東(JD.com)の 16.5%、拼多多(ピンドゥオドゥオ:Pinduoduo)の 16.4%、抖音(ドウイン:Douyin)14.3%である。2024 年上位 4 位の事業者で全体の 87.0%を占めて いる。アリババグループは 2019 年、51.0%のシェアであったが、他の EC 事業者も SNS や ライブコマースとの連携でシェアを拡大している。2026 年、アリババグループと京東のシ ェアは微減、拼多多は微増と見込まれる一方、抖音は京東と拼多多に並ぶ 16%程度までシ ェアを拡大することが見込まれています。
メーカー(事業者)はアリババ一強時代の終焉を考慮し多角的なプラットフォーム展開が必要になります。日本でもTicTokShopがローンチしていますが中国で「抖音(中国版TicTok)」の成長は目覚ましく特に注目されています。
越境ECとインバウンド消費の関連性
令和6年度「電子商取引に関する市場調査」報告書の中にも「越境ECとインバウンド消費の関連性」に関しても下記のような言及があります。
【外国人による訪日と越境 EC には密接な関係があると言われている。BEENOS グループ が 2024 年 11 月に実施した「越境 EC の利用意向に関する意識調査」によれば、外国旅行中に気に入って購入した現地の商品やブランドを、帰国後に越境 EC で再度購入した経験者は 44.0%(N=1,312)であった。2023 年に実施された「海外旅行及び訪日旅行における消費行動と越境 EC に関するアンケート」では 35.4%(N=741)であり、8.6%増加してい る。越境 EC で再度購入した理由としては、自国で買えないため(60.0%、N=607)、ブランドやショップのファンになった(45.6%、同)、商品が気に入った(39.9%、同)という 回答が多数を占めている。日本滞在時に、実際に商品に触れた経験、自分自身の目で確認で きた経験、信頼できると認識した経験が起点となり、また越境 EC で購入ができると認識されることで、帰国後(旅アト)の越境 EC の利用が促進されていると推測できる。】
FindJapanはこの点に関してはさまざまな調査検証を実施していました。報告書にあるようなことは確かですが、期待されるマーケティング効果を(旅アト)のみに限定する考え方はあまりに短絡的でマーケティングロスが大きい考え方だと思います。
現在FindJapanでは「越境ECとインバウンド消費の関連性」を最大限活用した手法で多くのメーカー様の中国マーケティングをサポートして成果を上げています。今後このような成果についても発表していきたいと思いますのでご期待ください。
2026年版中国マーケティング資料を準備中です。しばらくお待ちください。