中国マーケティングセミナー要約 【2023年】
<目次>
目次[非表示]
ポイント解説|日本ブランドの爆買いのメカニズム
日本ブランドを対象に中国人インバウンド回復の機会をどの様に活用し中国市場を獲得していくべきかを解説するセミナーが開催されました。
- 2019年の中国人観光客の「買物代」の総計は1兆円を超える巨大マーケットです。この巨大マーケットはコロナ回復後更に拡大する事が想定されます。
- インバウンド需要は3つのリソースの回帰によって新しい人気商品を誕生させる
訪日旅行と中国国内での商品購入カスタマージャーニーの共通点が多い。買物リストに入るためには「旅前」施策でこの共通点を考えて実施すると効果が高い。
- 中国マーケティングでもやっぱり重要なのは「認知」と「配荷」
中国インバウンドはいつ戻る?
インバウンド復活も残るところ中国からのみとなりました。日本での買物代が最も多い中国人訪日客復活を期待していると思いますが回復見込みはいつ頃でしょうか?
2023年7月(夏休み)頃から緩やかに回復見込み
直近の月間中国人訪日客は 3月/75,700人、4月/108,300人となっている。この数値は2019年の10%ほどの人数になります。ビザの問題など原因はさまざまですが中国航空便の増便や予約状況から7月の夏休み期間から回復の速度は早まり年内には緩やかに回復すると予測します。日本に関心が高い購買層が先行して訪日することが予測されます。
中国人観光客の買物代が他国より多いのはなぜ?
2023年1-3月の訪日消費動向を確認すると中国人の買い物代184,848円全国籍の約4倍になる。この現象は直近では高額所得者に対してのみビザを発給している事が大きな要因ですが、この現象の根本的な要因は中国人消費者の特殊な商慣習によるものが大きいです。
下記のデータは2019年の訪日客の観光消費データです。2019年のデータでも、中国人訪日客は全国籍の2倍の買物をしています。宿泊費や飲食費などその他の旅行支出は全国籍と変わらない事から消費者像は全て富裕層でない事がわかります。結論から申し上げるとこの要因はFindJapanが2016年に提唱した「ソーシャルバイヤー」の存在が起因しています。
国土交通省観光庁「訪日外国人消費動向調査」2019年確報から抜粋
訪日中国人にとって日本は買物パラダイス
訪日中国人の立場になって考えると、円安・免税・ハンドキャリーによる関税や送料がないという貿易コスト安の要因で、日本は買い物パラダイス状態になります。観光でお財布の紐が緩みやすいという事もありますが、この様な要因から訪日中国人が購入する商品の特徴は2つあります。
❶越境ECなど中国で購入できる人気商品
越境ECなど中国に居住しながら購入できる人気商品は、関税などの貿易コストや円安の影響、さらに日本政府が打ち出している免税対策で日本ではバーゲンセール状態になりますので消耗品を中心に購入されます。
❷輸入規制などで中国で購入できない話題の商品
人幹細胞など口コミで効果が話題になっているが、輸入規制などで中国で購入ができない商品や人気ブランドの日本限定商品などは購入される傾向が高いです。
日本ブランドにとってのチャンスは何?
訪日中国人観光客の買物代の合計は1兆円を超えるマーケットですので、それ自体大きなチャンスです。加えて、日本ブランドにとっては自社商品の中国市場における認知を拡大する大きな機会となります。
中国インバウンド需要が生み出した認知の2極化について
コロナによって国の往来が遮断され、インバウンド需要がどれだけ日本の商品やブランドの中国市場での認知拡大に貢献したかが顕在化しました。
コロナ禍に越境ECにて日本ブランドに2つの現象が起こりました。
❷訪日数の減少は商品を認知する機会を減少させ新しい商品の越境ECでの売上不振
つまりコロナ前にインバウンド需要で人気になった商品は越境ECで大きく売上を拡大したが、コロナ禍に新規に投入した商品は売上不振となりました。これは認知の2極化現象と呼ばれるものです。この現象は経済産業省が2021年7月に発表した「電子商取引に関する市場調査」の中に記載してありますので詳細は下記資料ご参照ください。
電子商取引に関する市場調査(経済産業省 商務情報政策局 情報経済課)2021年7月
インバウンド需要はなぜ新しい人気商品を誕生させるのか?
インバウンド需要がなぜ中国市場で新しい人気商品を誕生させるのでしょうか? そこにはインバウンドボーナスという、主に中国SNS上での圧倒的な日本観光関連情報のトラフィック膨張が要因となります。その膨大に膨れ上がったトラフィックの中には日本での買い物情報が混在します。この膨大な買い物情報を形成するのは主に3つリソースになります。
❶芸能人・有名KOLの訪日
コロナ前には芸能人やKOLが、訪日中に日本の商品情報をSNSで発信し(仕掛けも含めて) 多くの人気商品を出生させた。現在でも彼らの影響力は凄まじく認知獲得手段として効力を発揮する。
コロナ禍において中国市場に対して、新しい人気商品が誕生し難い環境にあった日本ブランドは好機となる。
❷在中ソーシャルバイヤーの訪日
多くの在中ソーシャルバイヤーが商品仕入れや日本ブランドとのビジネスチャンス(仕入)を求めて頻繁に往来する事が予想される。免税・円安の状況が継続されればこの動向はコロナ前を上回る事も期待できる。また、彼らの一般消費者に対する販促活動は商品認知においても影響力を持つ。
❸一般消費の訪日
❶❷の要因で強力な日本ブランドの中国市場に対する認知獲得手段が再構築されると、徐々に一般消費者の商品消費に伴うUGCが発生し、ブランドが中国市場で認知され継続的な「買い物リスト」へのリストアップ環境が整備される。また、現在影響力が高いSNS(RED)のアルゴリズムから考えても消費者のUGCが爆文として大きなインプレッションを獲得する可能性があるため、認知獲得エコモデルを形成できる環境が整う。
爆買いのメカニズムとは ?
今までお話ししてきた内容を踏まえて、日本の商品がどの様に爆買いされていくのかそのメカニズムを解説したいと思います。
海淘コミュニティーの活性化が買い物リスト化への鍵
日本の商品が爆買いされていく仕組みを理解する為には海淘(ハイタオ)コミュニティーの理解が必要になります。海淘(ハイタオ)とは中国語で海外のものを買うという意味です。
海淘コミュニティーの主な構成メンバーは情報発信に影響力がある「KOL」、販売チャネルとしての役割を持つ「ソーシャルバイヤー」、そして商品を購入する「一般消費者」です。この3つのプレイヤーは明確に役割が分かれていません。曖昧な境界線でコミュニティーを形成しています。POINTとなるのは、嘘をつかない、絶対に良いものを案内してくれるなどの「信用力」です。この信用力を基盤としてコミュニティーが形成され、性悪説の社会の中で一定の安心を担保しています。買い物リストに安定してリストアップされるにはこの海淘コミュニティー内でのブランドのプレファレンス(好意)を高め活性化させることが重要です。
訪日旅行と中国国内での商品購入カスタマージャーニーの共通点
訪日旅行と中国国内での商品購入カスタマージャーニーの共通点は普段使っているSNSで情報集する人が多いという点です。特に小紅書(RED)が起点になる事が多いのが特徴です。小紅書(RED)は開発コンセプトが海外の情報を共有するソーシャルプラットフォームですので、海外旅行や海外商品の情報が多いのは自然な事です。現在、小紅書(RED)内では訪日コンテンツに対して、ユーザーの関心が高い為、関連ハッシュタグなども増加傾向で訪日関連コンテンツはインプレッションが伸びる傾向にあります。まさにインバウンドボーナスが発動している状況になります。
訪日旅行と中国国内での商品購入のカスターマージャ―は下記の表をご確認ください。
日本ブランドが実施するべき施策とは?
中国マーケティングで成果をあげるためには、海淘コミュニティーで自社の商品がどれだけ活性化しているかがポイントになります。インバウンドボーナスが発動している今、日本ブランドが実施するべき施策は何でしょうか?
中国マーケティングでもやっぱり重要なのは「認知」と「配荷」
皆さんもご認識のとうり、商品マーケティングにとって重要なのは「認知」と「配荷」です。この数値の掛け合わせで売上が確定します。中国を対象にした「認知」の取り方は海淘コミュニティーを活性化させる施策を行うことが初動としては合理性が高い施策となります。現在中国では、KOL配信施策など一般的に行われ、トラフィック戦争になっています。インバウンドボーナスを効率よく利用して、訪日文脈を活用しながらコンテンツを工夫し、差別化していく事が重要になります。
配荷に関してですが広域のメーカー様はインバウンド強化店舗への品揃えを強化する必要があります。また、値下げなどを誘発する悪い配荷のコントロールも重要になります。D2CブランドなどECとバラエティショップなどの展開のブランドに関しては厳選したソーシャルバイヤーとのチャネル構築を丁寧に実施して行くことをお勧めします。その後認知拡大してきたタイミングで中国越境ECなどの展開を検討してください。
具体的な施策に関して
お時間になりましたのでより具体的な施策に関しては、次回7月のセミナーでお話ししたいと思います。資料などはホームページからダウンロードいただけると助かります。