1中国経済はデフレなのか? 2025年の実態を数字で確認
2025年の中国CPI上昇率は通年で0.0%と、16年ぶりの低水準を記録しました。ただし年間平均値であり、年後半はけしきが変わります。
「中国はデフレだから化粧品も売れない」という声をよく耳にします。しかし数字を丁寧に読むと、その図式は単純すぎることがわかります。
| 指標 | 数値 | 備考 |
|---|---|---|
| 2025年通年CPI上昇率 | 0.0% | 16年ぶりの低水準 |
| 2025年12月CPI | +0.8% | 3ヶ月連続上昇 |
| 2025年コアCPI(12月) | +1.2% | 20ヶ月ぶり高水準 |
| 政府目標 | 2.0% | 未達 |
「デフレ」と「消費減速」はちがう
通年でみればデフレ圧力がつづいた事実はあります。しかし後半にかけてコアCPIは+1.2%まで回復し、「底打ちの兆し」が見えてきました。
重要なのは、化粧品小売の数字です。2025年の化粧品小売額は753億元(+4.5%)を記録し、全体消費(+2.8%)をうわまわる成長を示しました。デフレ下でも化粧品カテゴリは別の動きをしているのです。
「中国はデフレだから化粧品も売れない」は単純な図式として成り立ちません。消費者が「何にお金をかけるか」を選別しているのであり、品質と信頼性が高い日本化粧品はその選択肢に残りつづけています。
2それでも成長する中国化粧品市場 ― 25兆円の全貌
2025年の中国化粧品市場は全チャネル取引額で1兆1,042億元(約23.5兆円)。前年比+2.83%で成長継続。
デフレ圧力がかかるなかでも、化粧品市場は着実に規模を拡大しています。チャネル別に見ると、オンラインが市場をけん引していることがわかります。
| チャネル | 取引額 | 前年比 | 備考 |
|---|---|---|---|
| オンライン合計 | 7,217億元 | +4.45% | 市場の約65% |
| オフライン合計 | 3,825億元 | 横ばい | 市場の約35% |
| 全チャネル合計 | 1兆1,042億元 | +2.83% | 約23.5兆円 |
国別オンラインシェアと日本の立ち位置
オンラインが市場の約65%を占め、越境EC含むデジタルチャネルが最重要課題となっています。輸出額は78.2億ドル(+9.2%)と、中国発ブランドのグローバル展開も加速しています。
| 国・地域 | オンラインシェア | トレンド |
|---|---|---|
| 中国(国産) | 57.37% | ↑ 過去最高 |
| フランス | 16.12% | 横ばい |
| アメリカ | 11.74% | 横ばい |
| 日本 | 6.39% | 横ばい〜微増 |
| 韓国 | 4.00% | ↓ 減少傾向 |
国産ブランドがシェア57%を占める一方、珀莱雅は3年連続売上30%増、花西子は4年連続中国コスメTOP1を記録するなど、中国ブランドの台頭は著しいです。
しかし日本は6.39%で横ばい〜微増を維持しており、減少傾向にある韓国(4.00%)より健闘しています。高品質・高信頼の領域で日本ブランドはいぜんとして優位を保っています。
3日本化粧品が選ばれる5つの理由
敏感肌ケアへの信頼、成分品質、円安の価格競争力、情緒的価値、インバウンドからのリピート構造の5点。
敏感肌ケアへの信頼
中国女性の約35%が敏感肌を自認しています。IHADA・Biore UV・Melano CCなどが小紅書で高評価を獲得。「低刺激・無添加・皮膚科テスト済み」という訴求が強く刺さっています。
成分透明性と「成分党」の台頭
成分を徹底的に調べてから購入する「成分党」がひろがっています。日本ブランドは成分開示の透明性が高く、この層から強い支持を受けています。小紅書での「日本日焼け止め」検索は+2.88倍、「日本コスメ雑誌」+2.60倍、「日本香水」+1.77倍と急増しています。
円安による価格競争力
円安により日本製品の相対価格が低下し、越境EC購入の動機が高まっています。同品質の欧米ブランドと比較して割安感があり、「コスパの良い高品質」という位置づけが確立されています。
情緒的価値と「儀式感」
ニールセンIQ調査では77%の消費者が「情緒的価値」を期待していることが明らかになっています。日本ブランドの丁寧なパッケージング・使用体験・ブランドストーリーが「仪式感(儀式的な特別感)」への共感を生んでいます。
インバウンド→越境ECリピート構造
訪日中国人の約80%が化粧品を購入しています。都市部女性の約80%が日本化粧品の使用経験を持ち、「体験→リピート」の導線が確立されています。インバウンドで体験した商品を帰国後に越境ECで継続購入するパターンが定着しています。
小紅書検索トレンド(2025年)
4大手の苦戦から学ぶ ― 資生堂の事例と「勝ち筋」のヒント
資生堂は2024年に中国売上5.3%減、通期で純損失108億円。しかし日本ブランド全体の没落ではない。
苦戦の背景と構造的な問題
2023年の処理水問題により日本化粧品全体が▲17%の打撃を受けました。資生堂はその影響を大きく受けた上に、海南免税店の低迷も重なりました。「価格が高い・新製品が遅い・中国向け施策が不足している」という構造的な課題も指摘されています。
ただし、日本全体は2025年に横ばい〜微増に回復しています。問題は「戦略が変化に追いつかない」ことであり、日本ブランド全体の没落ではありません。
中小ブランドの「勝ち筋」
「高コスパ×専門性」で差別化
敏感肌・美白・UV対策など特定の悩みに特化した商品と、手頃な価格帯の組み合わせが中小ブランドの勝ち筋です。大手が手薄なニッチ領域で専門性を発揮することが重要です。
抖音「ブランド自播」シフト
抖音ではTOP20ブランドの85%がKOL比率を縮小し、ブランド自身によるライブ配信(自播)にシフトしています。コンテンツ力で勝負できる時代になっており、中小ブランドにもチャンスがあります。
5プラットフォーム別に見る中国消費者の買い方
天猫国際、抖音、小紅書の3つ。それぞれ消費者の行動パターンが異なり、つかい分けが成功の鍵。
| プラットフォーム | 特徴・規模 | 主なユーザー層 | 活用ポイント |
|---|---|---|---|
| 天猫国際 | 越境EC最大シェア・ブランド公式感 | 中〜高所得層 | ブランド信頼性・購買転換率 |
| 抖音 | 美妆GMV+34%超・ブランド自播台頭 | Z世代〜ミレニアル | ライブコマース・新規獲得 |
| 小紅書 | MAU約3億人・検討フェーズで影響力 | 20〜30代女性 | 口コミ形成・种草 |
| 微信 | ミニプログラム・CRM連携 | 既存顧客・リピーター | リピート促進・ロイヤルティ |
2026年注目の規制変更
① 化粧品電子タグ試行(2026年2月〜、6省市)
QRコードで成分情報を開示する電子タグ制度が試行開始。成分透明性を強みとする日本ブランドに追い風となります。消費者が成分を簡単に確認できる環境が整うことで、「成分党」へのアピールがより効果的になります。
② ライブコマース監督管理弁法(2026年2月〜)
虚偽宣伝・誇大広告を規制する新法が施行。品質訴求を得意とする日本ブランドに有利な環境となります。「本物の品質」を正直に伝えるコンテンツ戦略が、より効果を発揮しやすくなります。
まとめ:デフレ下でも日本化粧品が選ばれるしくみ
中国経済のデフレ傾向は事実。しかし化粧品市場は25兆円規模を維持し、日本ブランドは「品質への信頼」「成分の透明性」「円安による競争力」を武器に支持をあつめつづけています。
たいせつなのは市場全体をひかんすることではなく、自社の強みを活かせるポジションとチャネルを選び、中国消費者が求める「理性的な品質」を届けること。



